散歩道<2706>

                 ポリティカにっぽん、大恐慌再来? それでも元気に「村の秋」(3)              (1)〜(3)続く

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 そんな映画の舞台を眼下に見下す「天神山」の崖の上、お宮の広場で村人たち400人ほどが集まって「祖谷口(いやぐち)の秋フェスチバル2008」というカラオケ大会を開いていた。総選挙を前にした衆院議員もかけつける。
 村の人々の話を聞く。
 「このへん、昔はまったけがよく取れて、小学校の帰り道、ランドセルに1本入れてかえったよ」
 「以前は、刻みたばこの生産がさかんだったんだが、専売の工場がなくなって廃れたんですよ。木材も昔は10本も切れば、盆正月を過ごせたんだけどね」
 「仕事がないから、跡取り以外はみんな外に出て行ってしまう。高齢者は年金暮らし。そこから医療費の天引きだからね。いっぺん政治をかえなくてみなくちゃいかんかもしれないねえ」
 周りの杉林。地元の清流でとれたアマゴを炭火で焼く。紅白の幔幕
(まんんまく)の壇上で次々とマイクを握り、「兄弟船」「宇宙戦艦ヤマト」そして「Challenge21」と染めた揃いの赤シャツの「サライ」の合唱が続いた。なんだか楽しくなってうろうろしていると、「入れ歯の落し物です。賽銭箱のそばに置いてあります」なんてアナウンスが聞こえてきた。
 世界経済の風雨、日本政治の変動がどんな未来をもたらすかわからない。厳しい時代相のなかで、地に住む人々はそれでも元気に生きていかねばならない。「モダンタイムス」のラスト、チャップリンの失業者もこう言っていた。「へこたれないで、元気だすんだ。運が開ける」


'08.10.20.朝日新聞本社・コラムニスト・早野 透氏