散歩道<2673>
私の視点・ビッグ3危機(2)・新しい移動手段への挑戦を (1)〜(2)続く
だが石油価格高騰に続く今回の世界不況は、期せずしてこの20世紀型というべき産業構造や移動システムに対して根本的な疑問を提示し、同時に人々の夢に水をかけることになった。それは単にクルマの販売が低下しただけでなく、自動車移動への依存度が急速に減っていることにも表れている。
今、世界的にモビリティーの姿が変容しつつある。インターネットの発達で人と人が直接会う機会は減り、情報の交換はより加速された。一方で、対照的に歩いたり走ったり、自分の肉体を使って動くことに価値を見いだそうという人が増えている。精神の移動と身体の移動の関係は、かってないほど急速に変化してきている。そういう流れの中で急襲した今回の不況は、結果として自動車社会の問題や限界をも改めて露呈した。
将来における身体的移動が、自動車型という利己的かつ閉鎖空間移動の延長である必要はない。むしろそれから解放された、より自由で快適な移動手段が開発されるべきである。同時に全く新しい概念を持った交通システムや、それの制御方法がもっと社会的に求められてくるようになるだろう。
私がビッグ3に望むのは、クルマずくりで得たノウハウと設備、そして人材を、新しい社会に向けたモビリティへの挑戦に生かしてひしいいということである。それは無論、アメリカだけでなく。トヨタをはじめとするすべての自動車企業にとって共通の命題なのだ。
'08.12.2.朝日新聞・ライター、自動車雑誌「NAVI」初代編集長・大川 悠氏