散歩道<2659>

                    私の視点・オバマの米国政権と議会の関係も変化(2)                 (1)〜(2)続く

 その背景には、ブッシュ政権に多くのことを委ねすぎたという、やや苦い経験がある。今回の選挙ではブッシュ政権への批判や反省が基調だった以上、政権と議会の関係も変化せざるを得ない。より長期的な視点からは、1960年代のクリントン政権の時期から特に強まった大統領主導の政策決定は、すこしずつ揺り戻しの時代に入るとも考えられる。アメリカ政治は大統領と議会の一方のみでは長く担うことが出来ない仕組みである以上、こうした変化は珍しいことではない。
 だが、政権と議会の距離が開きすぎることは、政策過程の生き詰まりにつながる可能性を高める。ベトナム戦争やウオーターゲート事件の過ちへの反省から、70年代から80年代にかけて議会は大統領に距離を置いた。そして、この時期のもう一つの特徴は、石油危機等により混迷した経済と、イランのイスラム革命など急激な国際環境の変化に十分な対応が出来ないことにあった。
 それだけに、新政権と議会の双方が70年代の轍を踏まずに済むかどうかが、今後のアメリカ政治にとっては最初の試金石となろう。選挙での大勝は、オバマ新大統領の融和志向の政治姿勢とあわせ、政権発足後しばらくの間は、新政権の方針が議会に受入れやすい状況をつくり出すはずである。議会選挙において上下両院で民主党が多数の座を維持することも、その傾向を強める。大統領と議会が協調する環境は比較的整っていると考えられよう。
 とはいえ、大統領と議会の多数が同じ党だからといって、両者の協調が永続的だと考えるべきではない。仮に大統領と議会の立場の違いが大きくなる場合にも、それを緩やかな変化にできるか、また決定的な対立につなげずに済むかを注視する必要がある。その意味では金融危機など当面の緊急課題を乗り切った後が鍵となるかもしれない。

'08.11.6.朝日新聞・京都大教授・待鳥 聡史氏