散歩道<2657>

                    私の視点・オバマの米国新たな国際協調創出の好機(2)                 (1)〜(2)続く

 そしていうまでもなく、サブプライム危機に端を発した世界的な金融危機がある。1982年の累積債務危機や97年のアジア通貨危機と異なって、今回の危機の震源地はアメリカである。しかも、アメリカ一国で危機に立ち向かうことが出来ないのはもちろん、協調利下げをしても市場の反応が鈍かったことに示されているように,各国が協調して市場に介入したところで成果が得られる保証はない。そして、この金融危機を放置すれば、アイスランドやハンガリーの混乱が示すように、投資資金の湧出によって中東欧やアジアの新興経済国にも深刻な混乱が広がってしまう。
 軍事・経済の両面における圧倒的な優位に支えられたブッシュ政権は、同盟国を軽視した単独行動主義に走った。その結果としてアメリカは、単独行動に頼ることが不可能な、国際協調を強いられる状況にまで追い詰められている。これを、アメリカの凋落
(ちょうらく)としてのみ捉えることは正確ではない。ヨーロッパもアジアも、アメリカの抑止力と経済的優位に頼って政策を進めてきただけに、アメリカの軍事的・経済的凋落は各国の凋落をも招いてしまうからだ。
 だが、危機の中には将来の展望も潜んでいる。もはや単独行動に頼ることが出来なくなったアメリカには、同盟国との協力と結束を強化するほかに選択肢はない。同盟国からみれば、アメリカに対する発言力を強め、先進工業国の緊密な協議に基づいた国際体制を構築する機会となる。76年、石油危機のただなかに主要国首脳会議
(サミット)は誕生した。オバマ新政権を迎える世界は、新たな国際協調をつくりだす好機を得た。
 ブッシュ政権の無残な8年を振り返るなら、アメリカの単独行動が日本に有利であるという幻想に根拠がないことは明らかである。いま日本に必要なのは、欧米諸国と並ぶ主要国として新たな国際協調の青写真をつくる作業に加わることだろう。

'08.11.6.朝日新聞・東京大教授・藤原 帰一氏

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