散歩道<2656>
私の視点・オバマの米国・新たな国際協調創出の好機(1) (1)〜(2)続く
大勝を果たしたオバマ氏は、磐石の政権基盤を固めたかに見える。大統領選の圧勝に加え、上下院を民主党が制したことで、オバマ氏は強い指導力を発揮する機会を手にした。しかし、新政権の外交は、ブッシュ現政権の失敗と、その負の遺産に縛られている。
まず、イラク・アフガニスタンへの長期派兵がある。両国に多くの兵力を割かれる限り、新たな紛争に軍を投入することは難しい。アメリカに対立的な政府から見れば、攻め込まれる心配が少ない。長期は兵の継続は米軍の抑止力を弱めてしまう。
オバマ氏は治安が比較的回復してきたイラクからは撤退を約束しているが、混迷の深まるアフガニスタンへの派兵は強化せざるを得ないだろう。両国をあわせるなら長期派兵の削減は難しい。新政権は、足元を見られる状態で、イラン政策や北朝鮮政策を進めることを強いられることになる。
新政権はまた、ヨーロッパ政策とロシア政策でも負の遺産を背負わせられている。ブッシュ政権の8年間、アメリカは中東欧諸国、いわゆる「新しいヨーロッパ」との連携を深める一方、ドイツやフランスなど「古いヨーロッパ」との関係は悪化した。親米傾向の強い中東欧との関係を優先した結果だが、そのために米欧の結束は弱まった。
他方ロシアは、エネルギー供給をテコにして、ドイツやフランスへの影響力を強め、グルジア危機においても強行姿勢を貫いた。アメリカと「古いヨーロッパ」の亀裂は、ロシアに対する欧米諸国の影響力の後退を招いたのである。米欧関係の修復が新政権の課題となろう。
'08.11.6.朝日新聞・東京大教授・藤原 帰一氏
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