散歩道<2653>

                     社説・米国刷新への熱い期待オバマ氏当選(1)            (1)〜(3)続く

 米国を変えたい。刷新したい。
 米国民のこうした思いが、一気に噴出したような選挙だった。
 民主党のバラク・オバマ氏が史上初めてアフリカ系(黒人)の大統領に選ばれた。地滑り的な大勝である。イラクとアフガニスタンの戦争と金融危機。この「非常時」に、47歳の黒人大統領に米国の再生を託したのだ。
 歴史的ともいえるこの米国民の選択から二つの声が聞き取れる。ブッシュ政権のもとで分断された社会の再生への期待と、米国一極支配はもう終わりたいという想いである。米国という国のありようが変わるだけではない、世界との関係も新しい時代に入っていくだろう。
 

厚い壁を打ち破って
 
 「米国の強さは、軍事力や経済的豊かさではない。その理想の持つ力なのだ」と、オバマ氏は勝利演説で語った。人種や性別にかかわらず、だれにでも機会は開かれている。そんな米国の理想を自ら体現てみせた自信がみなぎっていた。
 選挙中は、人種的な理由やその若さから中傷にさらされた。世論調査でリードしても、多くの白人有権者が最後は黒人候補であることで二の足を踏み、投票しないのではないかという見方もつきまとった。
 そうした偏見をはねのけた末の、圧倒的な勝利である。キング牧師らが先頭に立った公民権運動から半世紀。肌の色にとらわれずに指導者を選ぶことを、米国民はついにやってのけた。
 米国の人種問題は、奴隷制以来の負の遺産だ。1回の選挙で克服されるはずもない。だが、人種という壁が破られた意義は限りなく大きい。これからは女性やマイノリティーが大統領を目指すことが特別視されなくなり、社会の融和が一段と進むのは間違いない。
 オバマ氏勝利の背景には、ヒスパニックやアジア系などのマイノリティー人口の増加をはじめとする米国社会の構造的変化がある。だが、まるで革命を思わせるこの大きな意識変化は、それだけでは説明できない。 


'08.11.6.朝日新聞、