散歩道<2627>

                     経済危機の行方・背景に経常収支の不均衡(1)                    (1)〜(3)続く

 今回の危機の背景には、米国とアジアなどの国々との間で、貿易やサービスなどの帳尻を示す経常収支の不均衡が広がっていたことがある。
 米国は、消費と投資の合計が国内生産を上回り、大きな経常赤字を出し続けてきた。一方、東アジアや中近東の国々は、国内投資以上に貯蓄して、経常黒字を膨らませていた。
 そうした中で、米国は経常黒字国から取り入れた資本を生産的な投資に回さず、国内の住宅投資に向け続けた。それがバブルを生んだ。
 経常収支の不均衡が広がった原因が、黒字国と赤字国のどちら側にあるのか、という議論には意味が無い。
 では、アジアで経常黒字が続いていたのはなぜか。原因は国によって異なる。
 東南アジア諸国は、かっては国内投資が貯蓄を大幅に上回り、経常赤字だった。しかし、97年発生のアジア通貨危機のあと、所得に対する貯蓄の割合はあまり変わらなかったが、投資の割合が減ったために、経常黒字になった。銀行や民間企業が次々に破綻した後では、新しい復活は簡単ではない。
 通貨危機の影響を受けなかった中国では、投資も増えたが、貯蓄も増えた。しかも、貯蓄の増え方が大きかった。
 中国は日本と同様、急速に高齢化が進んでいるが、年金制度や医療保険といった社会保障が十分ではない。このため、人々はカネを消費に向ける安心感が持てず、貯蓄に走ってしまう。
 中国人民元の為替レートがドルに対して低すぎて、貿易黒字や経常黒字が拡大したと見られた時期もあったが、今は以前ほど大きな問題ではない。05年に為替制度を変えてから、人民元はすでに約20%切り上げられている。
 韓国も急速に高齢化している。すでに先進国になり、成長率も投資率も落ちてくるのは仕方がない。それに応じて貯蓄率も下がればよいのだが、将来に備える人が多く、どうしても下がらない。 
 

'08.11.4.朝日新聞・アジア開発銀行総裁・黒田 東彦氏