散歩道<2628>

                     経済危機の行方・背景に経常収支の不均衡(2)                    (1)〜(3)続く

米バブルあくまで国内に原因

 アジアを始めとする経常黒字国が米国債を大量に買い入れたことが、米国の低金利を支え、バブルを生んだという指摘もある。それは違う。
 バブルの発生と崩壊の原因は、あくまで米国の金融に対する監督と規制のあり方に帰せられるべきだ。住宅投資を促進する税制や、政府系金融機関のローン保証といった政策にも問題があった。
 米国の住宅ローンの仕組みの下では、住宅価格の下落が下落を呼ぶ悪循環になりやすい。ローン残高が1千万円で住宅の時価が800万円まで下がった場合、日本では住宅を銀行に差し出しても200万円の返済義務が残るが、米国では、担保を渡せば、それ以上の返済義務は無い。だから債務者は苦しくなると簡単に住宅を差し出す。
 とくにサブプライムローンの場合は目一杯借りていたので、すこしでも住宅価格が下がると、大量の住宅が銀行に差しされる。
 米国が金融緩和を続けたことは間違いだったのか。ここでは意見が分かれる。
 一方に、金融緩和で経済を底上げしようとしたこと自体に無理があったのではないか、という見方がある。有効な投資先が無い中での緩和は、必然的に住宅バブルを招いたという指摘だ。
 確かに、IT革命はそれほど米国の潜在成長率を上げてはいない。しかし、米国が依然として技術革新の先端を走っているのも事実だ。いつ、どのタイミングで具体的な技術革新が起きるかは、だれも予測できない。
 政策担当者としては、不況を長引かせないためにも金融を緩和し、投資を促進するというのは、極めてオーソドックスな手段だ。これを否定する見方は、いかなる理由をつけようとも、あと知恵に過ぎない。
  

'08.11.4.朝日新聞・アジア開発銀行総裁・黒田 東彦氏