散歩道<2617>
  
                        経済危機の行方・恐慌防ぐ手を正しく打て(3)                       (1)〜(3)続く

特定通貨に依存しない仕組みを 

 基軸通貨としてのドルと、米国の役割も、やがて終わっていくことは明らかだ。
 ただ、私がすでに著書「世界に格差をバラ撒
(ま)いたグローバリズムをただす」(原題はMaking Globalization Work)に書いたように、各国が保有する準備通貨がドルから二つから三つに分散すれば、より不安定なシステムになってしまう。
 もし、ドルとユーロの二つになれば、米国に問題が起きた時は、みんながユーロ買いにに殺到する。逆に欧州に問題が起きれば、ドルに殺到するだろう。それでは不安定極まりない。
 結局のところ、特定の通貨に依存しない多角的でグローバルな準備通貨システム、すなわち「グローバル紙幣」が必要とされているのだ。それは各国通貨のバスケット方式であり、IMFのSDR(特別引き出し権)を恒久化したようなものだ。ケインズが44年のブレトンウッズ会議でドルやポンドの代わりに主張した国際通貨「バンコール」の現代版でもある。
 同時にIMFに代わる国際機関を創立することも必要だろう。新たなブレトンウッズ会議を開催すべき時なのだ。その意味では、今月半ばにワシントンで開かれる「G20サミット」は、今後のグローバルな金融制度について議論を始める場として意義がある。
 しかし、そのG20を、もはや誰もが尊敬しなくなっている大統領が主導するのは問題だ。危機を克服するには素早く行動しなければならないのに、それができないという困った状況に我々は直面している。
 日本はバブル崩壊後の不況を克服するのに長い時間を費やした。今回の危機を長期化させてはならない。
 これまで米国は最大の消費国として世界経済を引っ張ってきたが、現在の世界危機と不況を克服するうえで、「経済成長のエンジンの多様化」も必要だ。とくに日本の役割は重要であり、できる限り力強い経済成長を実現することが求められる。


'08.11.3.朝日新聞・米コロンビア大教授・ジョセフ・スティグリッツさん