散歩道<2601>

                     
経済危機の行く方大恐慌と同じ道たどらない(3)              (1)〜(3)続く


金融版「WHO」構築し英知を絞れ 
 
 これから米国では、過剰消費の反動で、「節約しろ」という動きが出てくるだろう。当然、消費は落ち込む。それが新しい問題だ。
 消費が減ると、米国の産業界は困る。米国の輸入が減り、世界経済に与える影響も深刻になる。新興国の高度成長は、米国市場への輸出によるところが大きいからだ。だからこそ中国やインドは米国を助けようとしている。相互依存。もたれ合いの経済になっているのだ。
 中東の産油国についても、考え方が変わるだろう。西欧側からは、中国などとともに民度が低いと見られていたが、立場が逆転し大金持ちになった。そのカネがないと、今回の危機は乗り切れない。
 「文明の衝突」なんて、のんきなことを言っていられる時代ではない。文明の衝突ではなく対話が必要な時代だ。経済で頼っておいて、政治では「文明の対立」などという理屈は一人勝ってと言われても仕方がない。
 逆接的になるが、経済危機は世界がそれだけグローバル化したことの証といえる。経済のみならず、政治的にも文化的にも、80年前に比べればはるかにグローバル化が進んだゆえに、困難を解決する道も出てきた。国際協調という中での解決もできる。
 ただ一番の問題は、今回のように暴走する危険をはらむグローバル経済を、どう統治するかだろう。
 金融の自由化が進み、国境を越える人の往来も自由になった。それに対して、相対的に国家の基盤は弱まり、政府の役割は低下した。一国にグローバル経済の統治の責任を持たせるのは無理がある。
 経済とは直接関係はないが、私は、国連の機関である世界保健機関(WHO)に注目している。WHOは80年、天然痘の撲滅を宣言した。20世紀の死者は3億人にも上るとされる。この数字は2度の世界大戦の犠牲者より多い。
 成功の要因は、イデオロギーや政治体制を超えて最高の専門家を集め、英知を縛ったことだ。冷戦時代も、ことWHOに関しては、ソ蓮と米国は協力した。
 今回の経済危機を受けて、経済、なかんずく金融の世界でWHO的な存在を構築できれば、有効な解決策が出てくるのではないかと考えている。


'08.10.19.朝日新聞、ハーバード大名誉教授・入江 昭氏

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