散歩道<2600>
経済危機の行く方・大恐慌と同じ道たどらない(2) (1)〜(3)続く
国際協調が不可欠と米も悟った
今回の金融危機をもたらした背景は何か。それは、レーガン政権が採用した市場原理主義的経済政策のひとつの帰結といえる。政府の介入を排して市場経済に任せれば、借金しても、株は上がり、家は高く売れて、全てうまくいくという楽観主義を、米国の市民と企業に植え付けた。そういうことを銀行までがやり出して、投資と融資の区別がつかなくなった。その結果、米国は政府も民間も借金漬けになった。
米国の赤字経済は、一方で、世界のグローバル化を促進した。米国は海外からカネを借りて、海外からモノを買う。その分、日本や中国が潤った。米国が日本人のように貯蓄していたら、今回の破綻(はたん)はなかっただろう。国際経済の完全自由化のために米国が背負った十字架といえるかもしれない。
米国政府は、イラク戦争は事実上単独行動でやったが、今回の経済危機では単独では何もできない。それは現在の共和党政権もよく悟っている。なりふり構わず他国に助けを求めている。次の政権が民主党になっても、国際協調に向かうのは間違いない。
今回のことは、米国のためにはよかった。「自分たちは大国、世界一の国」という意識、ゆえなき優越感が減って、国際社会の一員だと再認識したからだ。金融危機はグローバル化の負の面ではあるが、だからといって、グローバル化をやめよう、殻に閉じこもろうという方向にはならないだろう。金融危機を克服していくグローバルな意識やグローバルな依存体制が、政治的、思想的に、かってないほど出来あがっている。それが将来に希望をもてるようにしてくれる一番の原因だ。
'08.10.19.朝日新聞、ハーバード大名誉教授・入江 昭氏
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