散歩道<2598>

                  経済危機の行く方欲望と倫理 バランス不可欠(3)            (1)〜(3)続く

過剰消費変わるか米国の選択が鍵


 今回の危機で、ドルへの信認が改めて問われている。基軸通貨国が規律もなくドルをばらまいて、世界経済が回って行くやり方が持続的なのか。危機が広がるなか、米国への「資金回帰」で一時的にドル高になったが、「ドル不安」は常にある。かといって、ドルに代わる総合力をもった通貨はまだない.後継者がいないのに、指導者の力が落ちている不安定な状態だ。
 最近では中国や中東、ロシアなどの資源国に異常な額のドル建て準備がたまったことを、米国自身も意識せざるをえなくなっている.一部の国々の政府系ファンド(SWF)は、米国への牽制として政治的な思惑でドルを持ち始めている。
 だから、米国もSWFの行動規範づくりに異常なくらい執心している。日本やドイツのように共通の価値規範をもつ国の貿易黒字には安心しているようだが、中国のように価値規範やシステムの違う国との間で国際収支に不均衡が生じると、新たな不安定を抱えることになる。先週、米国での旧知の米政府関係者に会ったが、今回の危機が単に金融市場や金融産業だけの問題でないと心配する声は、米国内にもある。イラク情勢の泥沼化も含めて考えると、米国の国際的威信の失墜や、覇権国としての地位の低下、ドル本位体制の終わりの始まりなのかもしれないという不安を感じた。
 しばらくは米国の家計消費は落ちざるを得ず、貯蓄率も上る。実体経済が上向くには2010〜11年ごろまでかかるだろう。その時、米国の過剰消費体質が変わるのか。変わるとすれば、それと表裏の関係で、日本や中国を含む他国が対米輸出に依存する体質をどう変えていけるのか。米国の選択は、世界に対しても重い選択を迫る。
 その意味でも、今回の危機は世界の構造問題そのものを問うていると受け止めるべきだ。


'08.10.18.朝日新聞 元大蔵省財務官・行天 豊雄氏