散歩道<2573>

                       経済気象台(390)・信用崩壊の危機

 経済取引は信用の上に成り立っている。日本では信用の瓦解(がかい)で色の安全が脅かされているが、米国では金融の世界から信用が瓦解し始め、ついに世界の実物経済を収縮させようとしている。米国が金融救済法で表面的な出血をふさいでも、公的資金や政府の威光だけではこの信用を回復できない。それだけに、情勢はなお楽観を許さない。
 実際金融市場での信用崩壊が著しい。欧米の短期金融市場では銀行同士が信用出来なくなっているために、余裕資金を持つ銀行が資金不足の銀行に貸さなくなっている。事実上流動性が枯渇したので、最後は中央銀行がその不足分を出さざるを得ない。まさに金融恐慌の様相を呈している。銀行のみならず、最近では事業法人が社債を発行する際にも、国債より大幅に高い金利をつけざるを得なくなり、これが収益を圧迫している。
 欧米の銀行には預金者の信用を失い、預金流出の危機に瀕
(ひん)するものが出ている。このため、アイルランド政府は預金を全額保護すると言い出し、米国でも預金保険での保証額が従来の10万jから25万jに引き上げられた。それに必要な資金は、財務省から無制限に借りられるようにする。更に米国では経営危機にある金融機関が評価損を出さなくてすむように、時価会計の停止を言い出す始末。そこまでやると、今度は政府自身の信用が問われる。
 金融危機が実物経済に跳ね返るようになっただけに、一刻も早くその連鎖を断たねばならない。しかし、相互の信用を回復することなく、政府が金融安定化策を講じても根本的な解決にはならない。信用の回復には厳しい規律と時間を要するもので、その間は経済対策の合わせ技も必要になる。


'08.10.7朝日新聞

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