散歩道<2572>

                          経済気象台(389)・問われる覚悟と力

 我が国最大の金融グループが米国大手証券に対し90億jという巨額の出資を決断した。議決権の21%を取得するという。企業買収はデューディリジェンス(DD)と称して対象企業の資産や事業内容などを精査し価値査定を行った上での取引となる。今回は恐らく90億jという額を決めておいて、そのDDを踏まえ合意した一株あたりの資産価値に従い逆算すると結果的に21%相当の株式になる、ということだろう。だが紙くず同様とも言われる証券化商品、下がり続ける不動産価格という現実に加え、実態経済の悪化が今後強く懸念される状況下での保有資産の価値や事業性の見極めには大きな困難が伴う。負ったリスクは小さくないと思われる。
 そもそもこの度の出資の見返りに何を求めるのか。グローバルなアライアンス戦略を検討していくとあるが、高収益を実現してきたビジネスモデルそのものが破綻
(はたん)した今、事業領域をどう規定しどこに経営資源を集中するのか。業務執行体制や幹部人事をどうするのか。取締役を派遣するというが誰に経営を託すのか。経営を委ねる人の報酬をどうするのか。資本勘定が大きく痛んだ企業に大株主としてかかわる以上、経営再建を指揮する覚悟と力とがまず問われよう。それが無ければ投機に終わる。
 バブル崩壊後、公的資金に頼り、税制の恩恵を受けながら余計なことに手を出さないことで回復してきたわが国の金融機関が国際舞台に打って出ようというわけである。貸し渋りによって不動産業、建設業を始め多くの企業が倒産している現状を見るにつけ、今回の決断が米国発の負の遺産を分担するだけの「国際貢献」とならぬよう一国民として願っている。

'08.10.1.朝日新聞