散歩道<2524>
   
                     opinion 福田首相辞任・責任忘れた小粒な政治(2)                (1)〜(2)続く

 自殺者が10年続けて3万人を超えた*5。一方で、就職もままならない若者も多く、中には悲惨な事件の加害者となる一方で、ケースもある。これはもう、一種の内戦状態だと表現した人がいた。そういう状況を生み出した責任は政治家にあるのに,不感症が政治の世界に染みわたっている。政局の動向にしか関心を向けないメディアの責任も大きいが、政治家自身の小物ぶり,小粒化は否めない。
 権力が神話化され、死闘を繰り広げても権力を手放そうとはしなかった時代は「三角大福」で終わったのだろう。リクルート事件が主要な宰相候補をすべて汚染した後は、小物ぶりにいっそう拍車がかかった。そして薄っぺらにもかかわらず、小泉政権が異様な支持を集め、そのやりすぎをただす途中で安倍、福田両政権が倒れた。
 小粒化はしかし、政治の世界にとどまらない。私はいま、20年近くが過ぎた平成時代を考える取材をしているが、この間、松下幸之助
*3、美空ひばり*4、手塚治虫といった国民的な希望を語れる人たちが世を去った。昭和の終わりとともに、大きな何かが失われた。だが、バブル*1のななかにいた私たちはそのことに気づかず、「失われた10年」*2に意気消沈したまま、新たな希望を何も生み出せずにいる。
希望を生み出すのは言葉だ。言葉は政治の武器でもある。短命に終わったが、ジャーナリスト出身の宰相、石橋湛山には、人と人は言葉でしかつながれないという覚悟があり、その言葉は、びんびんと響く力を持っていた。薄っぺらな政権が続く今こそ、求められるのは言葉の重みだ。米大統領候補のオバマ氏が「チャンジ」と叫んで支持者を引き付けたように、日本の次の政権の担い手は、人々に伝わる言葉を持てるだろうか。


'08.9.3朝日新聞・ノンフイクション作家・佐野 眞一氏

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