散歩道<2522>

                opinion 私の視点・福田首相辞任(2)国民とは違う「物語」を語る          (1)〜(2)続く   

 政策についても、よく聞いたらおかしなことは言っていない。消費者庁の構想についても、私は高く評価している。これは安心して消費できるための、生活を守る政策だ。単なる役所の寄せ集めではない。だがそれが国民につたわっていない。表現力、アピールする力があまりにつたない。 国民は、いいタイミングで自分たちに関心のある政策を語ってほしいと思っている。世の中は複雑化しているが、メッセージは単純にしてほしいという圧力は強い。これは小泉時代にはっきりした。今なら貧困対策をどうするか、医療をどうするか、それを言ってもらいたい。
 首相は「政治的駆け引きはいやだ」という意味のことを言った。ルールにそって粛々とやりたいというのだろう。しかしそれでは政治華とはいえない。ルールを変えるのが政治家であり、駆け引きをわかりやすい言葉で国民に語るのが政治家だ。実行力とメッセージ伝達力、その両方が欠けていた。
 首相という職の軽さが言われるが、福田さんは「重い」とおもっているからこそ辞めるのだろう。いま、この政治状況で、自分が座っていることは国民に迷惑をかける、だから辞めようと考えたのではないか。それが彼の空気の読めなさであり、政治家として空気に表現を与えることができなかった。
 受け応えの運動神経とでもいえばいいだろうか、その能力が低い。北京五輪金メダルの水泳の北島康介や柔道の石井慧を見習ったらどうか。石井*1は「海外のJUDOをとりいれる」など、日本柔道の「禁句」をテレビで言ってしまった。それが経済界などから喝采を受けた。政治家も過去の伝統やルールを破って、日本人はこれからこうやるんだ、と言ったらどうか。メディアを通じて、それが許されることを多くの人が知ってしまったのだから。

'08.9.3.朝日新聞・東京大学教授・松原 隆一郎氏

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