散歩道<2511>
経済気象台(369)・ブラックボックス
世界の燃料・原材料価格が高騰する中、それらの多くを輸入に頼ってきた日本の製造業はかってなく厳しい状況にある。原材料の使用量を最小限に抑制しても、最低限のコストはかかる。原材料高に対応するには、自社製品を値上げするか、利益を削るしかない。
だが、製造業の場合、他にまねができない独自の技術やノウハウがあれば、時代を問わず高い利益を確保することが可能だ。これまでの高収益による蓄積があれば、日頃の顧客に対する感謝を込めて、価格を据え置くこともできる。
材料の成分や混合比、成形加工時の温度や湿度管理、設計・開発ノウハウや手順など、特許という明確なものから明文化されていない現場の知恵まで、製造業には独自ノウハウが存在する。このように、他にまねができない秘密や他が手をだせない領域をブラックボックスという。
価格交渉になれば、買う側はブラックボックスの中身を知りたがる。マネができるなら他者につくらせ、値下げ交渉を有利にできるが、マネができなければ言い値で買い続けるしかないからだ。
こうした事情もあって、ブラックボックスは自ら進んで開陳するものではない。また、明らかになっても簡単にマネができない場合が多い。ブラックボックスには過去の労力と知恵、失敗と改善の歴史が含まれているからだ。それが、高い利益をあげても社会が認めてきた理由でもある。
ここ数年、世界中で価格競争が激しくなり、製造業ではブラックボックスの疲弊が続いた。歴史的な原材料高は日本の製造業にとって逆風ではあるが、自社のブラックボックスを再構築するよい機会にしたいところだ。
'08.8.12.朝日新聞
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