散歩道<2508>

                       けいざいノート・
米国の金融危機(2)              (1)〜(3)続く
                        市場の混乱防ぐには 大胆な国際協調の構想を

○ ○ ○
 低金利政策や金融セクターへの公的資金投入による財政悪化はドル安を生む。07年夏以降、ドルは他の通貨に対してかなり下落している。大きな流れとしてはドル安がさらに進んで、米国の内需が縮小し、輸出競争力が高まって、貿易収支が好転することで、いわば輸出主導で米国の経済回復が進むと思われる。
 その結果、世界経済で何が起きるだろうか。
 現在のドル安はドルに連動している中国や中東産油国の通貨も割安にし、それらの国々でインフレ圧力をもたらしている。また、原油などの高騰は、産油国の景気過熱を助長し、インフレ圧力をさらに高める。
 過度のインフレは、貧困層や若年層の生活を悪化させ、格差、民族問題、テロなど社会不安につながる。
 一方、たとえば中国がインフレを抑えるために金利を引き上げ、人民元の切り上げを行えば、中国の景気には急ブレキがかかる。そうなれば一時的には深刻な不況になる可能性もある。現在、すでに上海の株価が暴落しており、中国経済の先行きには懸念が広がっている。
 要するに、米国の金融不安とドル安が急速に進むと、中国などは、インフレによる社会不安か、通貨切り上げによる急な不況か、という選択を迫られることになるだろう。世界の市場が混乱する限り、痛みのともなう調整が必要になる。
 このまま金融危機が深刻化するなら、調整をソフトランディングさせるため、通貨面での何らかの国際協調を考える必要が出てくるのではないだろうか。

'08.8.30.朝日新聞・経済研究所上席研究員・小林 慶一郎氏


関連記事:散歩道<1251>デイベート経済・「脱デフレ」と残る課題(1)、<1463>ディベート経済今後の経済・国家の役割は?(1)〜(4) 、<1753> けいざいノート・企業不祥事なぜ相次ぐ(1)〜(4)、<1758>けいざいノート・「デフレの罠」?低金利が問題を再生産か(1)〜(4) 、<1907>けいざいノート・格差問題の深層(1)〜(4)、<2160>けいざいノート・論争はめぐる(1)〜(4) <2228>けいざいノート・サブプライム診断(1)〜(4)<2272>けいざいノート・政治と経済政策(1)〜(3)、<2454>けいざいノート・続く原油高(1)〜(3)、<検>言葉・*1サブプライム、