散歩道<2501>

                       私の視点・景気拡大の終わり・もう内需には頼れない(2)              (1)〜(2)続く

 今後、日本全体が好景気に沸く明るい景気拡大はもう期待できない。各部門がバランスよく成長するという戦後の景気か拡大の常識は崩れた。資本は世界中を自由に動き回り、利益の出る場所を海外に移した。一方、国内の個人消費は伸びないので、消費は牽引(けんいん)車になれない。
 つまり内需に依存した業界やその労働者は今後も苦しい。日本の雇用者の約7割は、成長力が低い内需中心の非製造業に従事するから、今回の景気回復でも収入は増えなかった。こうして格差
*2の時代を迎えた。成長の過程である新興国とは遮断され、販売先が国内に限定される中小企業・非製造業は取り残されたので、経済の足を引っ張り、景気の山が低くなった。
 昨年来、米国のサブプライム
*3問題が深刻になり、これまで日本の景気を支えてきた輸出に頼れなくなってきた。しかし、外需の追い風がなくなったからといって、「さあ、内需刺激だ」という考え方は古い。新興国の成長期待で生じた資源高が、日本の所得を過去にない規模で海外に輸出させているからだ。
 工業化やモータリゼーションを特徴とする経済の「成長センターは、インドや中国など新興国に引っ越した。日本を引っ張る大企業・製造業も、利益の源泉は新興国経済だ。国境を前提にした「近代」の仕組みによる総合経済対策はナンセンスだ。
 今後はグローバル化と自分をいかに結びつけるかを考え、政府に依存しない心構えが必要だ。もちろん、グローバル化を敵視するだけでもだめだ。 では、どうするか。大企業が集中する大都市圏は、グローバル経済に適した仕組みが整えられそうだ。一方、中小企業や非製造業が多い地域は、海外の顧客と直接つながって外需を獲得する新しい産業構造に立て直す必要がある。それには、企業の結びつきを従来の垂直的な関係から組み替えて、世界で利益を上げる仕組みを作って行かないといけない。こうした視点から、日本にとって真に必要な構造改革とは何かを考えなければならない。


'08.8.21.朝日新聞、三菱UFJ証券チーフエコノミスト水野和夫氏


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