散歩道<2500>

                    私の視点・景気拡大の終わり・もう内需には頼れない(1)              (1)〜(2)続く

 この景気拡大に実感が伴わなかった要因のひとつは、グローバル化*1の進展によって、これまで先進国の経済を支えてきた「近代化の仕組み」がかわったからだ。
 グローバルの化のもとでは、企業は簡単に国境を超える。つまり国境を持った国民国家の力が衰える一方、米国やロシア、中国などの新しい「帝国」とグローバル企業をつかさどる資本は、16世紀の絶対君主をしのぐような権力を手に入れ、圧倒的に優位になった時代といえる。国民国家として、資本と国家・国民が一体化していたのが近代だったが、資本と国家の結婚・共存関係が終わったのだ。
 今回の景気拡大で、大企業の多くは過去最高益を更新し、利益率も向上するなど、バブル期を抜く業績を達成した。世界経済のグローバル化に乗って成長を取り戻した。「改革なくして成長なし」を唱えた小泉元首相のおかげではなく、改革がなくても、大企業・製造業は成長したのだ。資本の力が国民の力を上回ったので、世界で戦える資本家はこれからも事業の拡大を期待できる。
 一方、国家は規制などによって働く人を守ることができなくなった。さらに株主の力が大きくなり、資本は利潤率を揚げることに専念できるようになった。かっては企業が利益を増やせば労働者にも相応の分配があったが、いまは資本に圧倒される労働者の没落が格差問題として現れている。被雇用者は景気の回復の恩恵にあずかれない。

'08.8.21.朝日新聞、三菱UFJ証券チーフエコノミスト水野和夫氏


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