散歩道<2497>

                   夏に語る・教育や企業文化 強さ健在・世界に出て競争参加を(2)             (1)〜(3)続く

教育や企業文化 強さ健在

 
 日本が経済的に成功した基礎には、会社への強い忠誠心や高い教育
*4水準、優秀な官僚、少ない犯罪などの社会構造があった。それを米国はもっと勉強しなければいけないとおもった。この本は日本ではすごく歓迎された。79年に東京ではじめて主要国首脳会議(サミット)がひらかれた時には、当時の大平首相が、サミットの準備のためには「この本を読めばよい」と色々な人に推薦したので、カーター大統領やサッチャー英首相も読んだという。
 米国の企業にもっと元気を出してほしいという、いわば「愛国者」の立場から書いたものだったが、米国内の評価は分かれた。一般の受け止めは、日本がそんなに成長するわけはない、私は日本に長く滞在し過ぎたので判断がおかしくなったというものだった。ただ、日本からの競争にさらされていた自動車メーカーや電機メーカーは、品質管理などの面で日本企業が優れていることに目覚めていた。私はGM
(ゼネラル・モーターズ)などの米国の大企業に呼ばれて話した。連邦議会議員との会合もひらいた。
 その後、バブル
*5がはじけ日本経済は低迷したため、私の見方は間違いだという指摘も出た。しかし、教育水準の高さ、企業の社員に対する責任感の強さなど、日本の社会の良い面は今も健在だと思っている。ハーバード大の元学長のサマーズ(元財務長官)さんはいつも、「日本の将来はもうない」と言うが、私は経済の数字だけを見て一国の社会を判断することはできないという見方だ。

世界に出て競争参加を

 ソニーや任天堂などゲーム機メーカーをみれば世界一は日本だ。日本人に新技術の開発ができないとは思わない。ただ、多くの大企業を前にして、創造的な小さな会社を立ち上げることが難しくなった。
 競争相手である中国人やインド人に比べると、シリコンバレーなど世界の新技術開発の中心地で能力を発揮している日本人は少なすぎる。優秀な人材は大企業に入って、居心地の良い日本から出たがらないからだろう。もっと競争に参加して、自分で先端技術のベチャー企業を立ち上げればよいのにと思う。そういう環境が日本にはない。
 

'08.8.25.朝日新聞・米ハーバード大名誉教授・エズラ・ボーゲルさん

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