散歩道<2482> 
     
                      夏に語る・「経世済民」が原点 改革続けて(3)                   (1)〜(3)続く

 新たな貧困解決は政府の役割

 グローバリーゼーション*3は経済的にみれば競争だし、かならず勝者と敗者が出る。同じ国の中でも、市場の拡大に乗って果実を得る人とそうでない人や地域の格差は大きくなる。負の影響を小さくするには、公経済の役割が大事です。市場に委ねることが多くなるほど、誰もが平等に公正な競争に参加できる機会や基盤の整備、失敗したり働らけなくなったりした時のセーフティネットである社会保障は、政府の重要な役割です。
 だが日本では逆に市場主義的な改革が万能薬のように「政府は小さい方がいい」ということでやってきた。公共事業に象徴されるように、非効率や利権、カネの流れの不透明は直さないといけないし、市場経済は優れたシステムだが過信してはいけない。人間の生活の一部である労働まで全面的に市場原理に委ねると、蟹工船的な働き方も是認することになる。医療改革のようにやみくもに歳出を抑制して、患者の安心が犠牲になる本末転倒が起きます。
 経済成長に意味があるのは、それぞれの人間の能力を生かし、みんなの生活水準がゆたかになるからです。政策や政治で人間の能力を生かし、やる気を引き出せるのにそれができていない。日本人の勤勉さや、良い意味での団結力、技術を考えれば、90年代のように年率1%台の成長で満足するのは、国民の能力を無視しているというか、活用しない考え方です。
 振り返ると、明治維新も戦後も国際化を勧めることで飛躍につなげた。戦後も早く立ち直ろうという国民の前向きな気持ちに応じるように、新憲法のもとで「非軍事化と民主化」の二つの改革が掲げられた。財閥解体や農地改革、労働3法や義務教育も整備され、解放体性の元で誰もが頑張れば報われる制度を作った。時代に合わせた制度改革が各分野で行われ、社会の活力の源泉になったわけです。
 グローバル化のなかでの新たな経世済民のありようは80年代広範以降、議論されてきたが、バブル
*4とその崩壊の後始末で曖昧になり、まさにその機会も「失われた10年*2」になった。ただ、日本人はもっと自信を持って言い。時代に合わせた制度改革を不断にすることです。


'08.8.16.朝日新聞・元経済企画庁長官・宮崎勇 

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