散歩道<2481> 
     
                      夏に語る・「経世済民」が原点 改革続けて(2)                   (1)〜(3)続く

 それでも戦後日本は世界に誇れる歩みだと思う。改めて認識すべきは戦争がないことが経済発展、成長の一番の要素だということです。日本の成功は軽武装・経済優先路線できたからだし、戦争をしなかったことが国際社会からも信頼された。
 いま日本は、明治維新と敗戦後に続く第3の転機にある。冷戦が終わり旧社会主義国とも一緒に地球をよくしていこうという時代になった。国境なき経済といわれるように、どの国も単一の市場経済のもとで競争しながら、豊かになろうとしている。日本もこのグローバリーゼーションに合うような制度を改革し、流れに加われば、また飛躍の希望が持てる。だが世界貿易機関の農業交渉も今のところ、外国からの労働力や資本の受入れも、従来の産業構造や規制を残したまま中途半端な国際化でお茶を濁そうとしている。
 一方で、格差問題やワーキングプアなどの「新たな貧困」の問題への感度が弱い。企業経営者は国際競争が激しいことを逃げ口上にしている。正社員の労働組合も自らの雇用を守る為、非正規社員の境遇に目を向けるのを避けてきた。だが安上がりの労働力で収益を上げても、成長は持続しない。低賃金で不安定な労働者を大量に増やし、企業は自分で需要を抑えているようなもの。戦後最長景気といわれながらも、消費はよわいままなのはその証左です。
 戦前も「蟹工船」や「女工哀史」のような過酷な労働があったし、高成長時も都市と地方、大企業と中小企業の二重構造が問題だった。だが社会全体に弱者や格差を大きくしない意識があった。分厚い中流層を育てることが社会の安定につながると考え、教育や税制を通じた所得再分配で平等化をめざしたし、企業も、成長の果実が従業員や下請け、取引先みんなに行き渡る経営をした。その良さが崩れているのが心配です。


'08.8.16.朝日新聞・元経済企画庁長官・宮崎勇 

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