散歩道<2465>

                         仕事力*1・桐野夏生・一人でやるしかない(2)             (1)〜(2)続く

3、建前社会になりつつある。
 
かき乱すものは嫌われる時代が来た、ある集団の中から放り出されないためにKY(空気を読む)ことに必死になっている人が目立つ。
 年齢を意識する必要はない、特に女性の場合は年齢を意識することはない、それは世間の価値観であり、建前の1つである。自分をその空気に合わせる必要はない。とにかく女性にはモデルケースはない。就職試験の情報や夢をかなえる道筋など色々なやり方があるでしょうけれど、その流れに慣れなかったり、つまずいたりしても、長い目で見たらたいしたことない。人は自分に向いているものに落ち着くものです。かならずチャンスは来るものです。
4、孤立を恐れない。
 
小説家だってスランプ*2がある、書く苦しみと喜びと、両方を味わいながら賢明にやってきたがそれでも自分でもどうにもならないスランプに落ち込むこともある。言葉で表す仕事なのに、言葉は全能ではないと不信感に陥ったり、アメリカへ行って小説を書くという仕事も実は市場原理主義と無縁ではないと考えたり、作家には10年に1度スランプが来る、20年限界説もある、一生懸命書いていても、時代とずれたり、体力が尽きたりすることもある、
 
暗いトンネルを歩くには強いタイトルがいる、小説を書くのは、暗いトンネルの入り口に立つようなものです。出口がなくて途中で行き止るかもしれないと思うととても怖い。でも強いタイトルがあれば何とかなる。タイトルというのは小説のコンセプトメーキングで、トーンも決定しますから、そのタイトルを懐中電灯代わりに掲げて暗いトンネルの中を行けば、何とか探れるものです。シチュエーションや癖のある人物など、色々な道具を手にして探検に出るのです。探検ですからいつも同じトンネルというわけにはいかない、新しいものに挑戦しなければならず、気力だけでなく勇気も必要になります。
 それはクリエートな仕事全般に言えることです。表現する仕事は周囲の空気を読んでいてはかなわない仕事です。孤立を恐れず、ということでしょうか。

'08.7.13-8.3.朝日新聞桐野夏生

関連記事:散歩道<180>若者の・失業に関して、<検索>*1仕事、<検索>*2言葉・壁、