散歩道<2432>
経済気象台(347)・成長の質を問う
IMFは世界経済見通しの中で、アメリカ経済低迷が他の先進国に波及し、高成長を続けてきた新興国経済にも影を落とす懸念があると指摘した。一方で、原油など資源、食品価格高騰に伴うインフレが大きな脅威となってきた。エコノミスト誌によれば、世界人口の3分の2が2けたインフレにさらされることになるという。世界経済はスタグフレーションに向かっているのかもしれない。
単純化して言えば、それはこれまでもっぱら経済成長のスピード(量的拡大)を求めてきたことの帰結ではないだろうか。借金と財テクによる利益拡大が住宅バブルとサブプライム問題を起こして景気低迷の引き金を引き、供給体制の強化や省エネ・省資源への取り組みを置き去りにしたままのグローバル経済の急拡大が世界的なインフレの背景にある。環境破壊も量的拡大追及の中で蓄積された矛盾が噴出したものといえる。所得格差や貧困の増大も効率化を通じた成長を急いできたことの帰結であろう。その結果、経済成長や生活水準向上の持続性に疑念が生じている。
これからは成長の質が問われる時代に代っていくのではないか。バブルが生じにくい金融政策や金融システムが検討され始めているし、省エネ・省資源に向けての産業構造の転換、環境への負荷を軽減する技術開発に関心が高まりつつある。所得格差の過度の拡大にブレーキをかけ、貧困を減らすような財政や税制、労働市場の実現、セフティネットとしての社会保障制度の改革も検討されるはずだ。
そこで、石油ショックやバブルを経験した日本の経験や知見が生じてくる。国際社会でのプレゼンスをたかめうるチャンスを見逃す手はない。
'08.5.27.朝日新聞