散歩道<2374>
                         シャネルと源氏物語(2)・「オーラ」の香り 大衆に                   (1)〜(2)続く
                           ここには、大変分りやすい解説がなされている。                 

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 物語にブランド品が登場するだけではない。「源氏物語そのものが一つのブランド*3品だった」
竜谷大・安藤徹准教授だ。室町から戦国時代にかけて有力な武将らはこぞって源氏物語の注釈書を手に入れ、講義を聴いた。室町幕2代将軍、足利義詮(よしあきら)は源氏物語の注釈書を献上させ、豊臣秀吉は能「源氏供養」を好んで舞った。天皇を中心とした王朝文化の権威を、政治的に利用する意図があったようだ。「徳川家康は大阪夏の陣に勝利してすぐ、京都の二条城で歌人・中村通村に源氏物語の講義を受けた。王朝文化の極意を授けられ、文化的にも頂点に立ったとアピールしたかったのではないか。
 江戸時代,将軍や大名家では、家の権威を誇示するかのように源氏物語に題材をとった屏風
(びょうぶ)や蒔絵(まきえ)の調度類を婚礼道具として調えた。さらに印刷技術の浸透に伴い、大衆の間でも源氏物語の版本をもっていることが一つのステータスとなった。愛知淑徳大山田登世子教授は著書『ブランドの条件』で、ブランドが生まれる現象は「贅沢の大衆化」だと説く。贅沢品が王侯貴族に限られた時代に、「ブランド」という概念はなかった。王侯貴族の権威はブランドなど必要としないからだ。だが王侯貴族の時代が終わり,贅沢品は金で買える商品となった。貴族の読み物だった源氏物語も、貴族に続いて武将等に「ブランド」として大切にされ、さらに大衆化したように見える。

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 さて、20世紀に登場したシャネルは、「源氏物語」が何百年もかけてたどった大衆化の道のりを一代で成し遂げたともいえる。調香の粋を凝らした「シャネルの5番」は、1着が数百万円もするオートクチュアールのドレスに比べれば、まだ手ごろな価格。だから、アメリカ大衆の人気を集めた。
 「シャネル・モードは貴族階級からストリートまで下りてきた。にもかかわらず、贅沢品のオーラを失ってはいない。源氏物語も同じ。両者に通底するのは、時の流れに耐える上質さにある」千年たっても色あせない源氏物語の「贅沢なオーラー」は愛する女性達との日常に高価な、薫物を惜しみなく使うような、光源氏の優雅なセンスに由来するのかもしれない。


'08.6.7.朝日新聞

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