散歩道<2298>

                   私の視点・偽装社会(1)・生産者マインドをもとう              (1)〜(2)続く

 食品会社などによる偽装事件が起きたのは、消費者を軽んじているからだという意見がよくある。たしかに偽装したほうが利益は高まるうえに、インチキをしても消費者は気がつくはずがないと高をくくっている。
だが、生産者が消費者を無視していることが、偽装の原因だとは言い切れない。むしろ、現代の消費者のことを、彼らはよく知っているのではないだろうか。賞味期限が切れていてはいけない。製造日はとにかく新しいほどいい、ブランドイメージをつけたら高い商品でも売れる・・・・・。わたしたちの好みは、知られ過ぎているのだ。消費者には偽装を暴く力がないことも見透かされている。現に、ほとんどの偽装事件は内部告発でしか発覚しない。
 偽装とまではいえないが、言葉や数字を操作して印象を作り上げることはよくある。出版業界の例をあげるならば、新刊本が何冊売れたかは誰にも分らないと、関係者は口をそろえる。ところが、「○百万部突破」といいながら、あちらこちらの書店に百部ぐらい詰まれたままの新書は珍しくない。 
 公称の出版部数にはかなりの店頭在庫が含まれていて、仮に書籍が返品されても数字が下方修正されることはない。書店にうずたかく積み上げて、たくさん売れているとみせかければ、内容のない本でも消費者は手を伸ばす。ここでもわたしたちは研究し尽くされている。

'20.4.8.朝日新聞・国際日本文化研究センター准教授・山田 奨冶氏


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