散歩道<2294>
経済気象台(313)・事態の呼びかけ
原油の高騰は投機資金の流入によって加速され,今や幅広い物価上昇で世界の消費生活を脅かす波及効果も生まれてきた。米国のサブプライムローン*1が馬脚くをあらわすや否や、潮のように引いて商品や穀物市場にシフトする投機資金の変わり身の速さは見逃せない現実である。これは世界的な金融資産の拡大と表裏している。マッキンゼー社によると、世界全体でDDPに対する金融資産の割合は1980年の109%から2005年には316%に急増した。その過程でいわゆる「ファンド」による遊資の組織化が行われ、プロの運用者たちがより多くの利益を上げる目的だけで投資を代行する。その資本は株式会社の草創期の「資本」とは全く働きが異なる。しかもその実体は不透明で、野放しの状態にある。サブプライムローンを組み込んだ証券の市場でAAA格のものでさえ半値でしか売買できなくなっている背景には、こうした「ファンド」の行動原則がある。その結果として金融機関の自己資本の欠損が膨大になり、その影響は信用収縮を通して米国そして世界の経済に大きな打撃を与えつつある。ポールソン財務長官はFRBの機能強化に動いたが、対処療法でこの原因を掘り下げて抜本的な対応を迫る政治本来の動きは鈍い。経済のことは経済で、基本は自己責任でという建前や大統領選挙戦の最中という制約はあるが、後手を引くと修復のコストは大きくなる。これまでの常識にとらわれず事態を直視し、事態の側から呼びかけられていることに、もっと正面から向き合う必要があろう。米国としても未体験のこと、日本の苦い体験も踏まえての助言や協力の道もあるのではないか。
'08.4.4.朝日新聞
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