散歩道<2292>

                         経済気象台(311)・自己資本政策と景気変動

 サブプライムローン*1問題で改めて浮き彫りになったのは自己資本政策の有する景気増幅的な性格(プロシクリカリティー)だった。景気が拡大し資産価格も上昇し(回収率上昇)、金融市場の価格変動率が低下する局面では、計算されるリスク量は減少し、金融機関が必要と認識する自己資本は減少する。その結果、与信姿勢は積極化し、景気はその面からも刺激される。しかし、いったん何らかの理由で資産価格が下落に転じると、すべては逆回転を始める。金融市場の価格変動率は上昇し、必要自己資本も増加する。その結果、与信姿勢は慎重になり、景気は悪化する一方、資産価格も下落するため、金融機関の行動はさらに慎重化する。問題は必要自己資本量の計算である。新しく始まったバーゼル2と呼ばれる自己資本比率規制では従来の規制に比べてリスクウエートの算定は個々のリスクに対して感応的であり、その限りでは大きな前進である。しかし、標準的手法(外部格付けに依拠)、内部格付け手法いずれであれ、基本的な方法論は過去の倒産確率、回収率、相関係数、変動率などに基づくリスク量の計算である。このため、十分長い計算期間を取らない限り、自己資本比率規制が金融機関の方法に影響を与えることを通じて、リスクテーク能力を左右し、景気の振幅を増幅する危険性があることも否定できない。自己資本比率規制は個々の金融機関に対する規制という観点からも重要であるが、金融政策運営上も重要なインプリケーションを有している。例えば、教科書には金融政策の効果波及経路として金融機関の利鞘(りざや)の変化が挙げられているが、今日ではリスクテーク能力の変化を通じる経路の方がはるかに重要である。金融機関の規制・監督のあり方、金融政策運営に当たっても、これらの点に関する議論を深める必要がある。

'08.2.21.朝日新聞

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