散歩道<2251>
経済気象台(294)・未来を保証する
皮肉好きなフランスの詩人、ポール・バァレリーは「我々は後ろ向きに未来へ入っていく」と言った。未来に入っていく我々の視野には未来は無い。過去と現在だけが大きく見えている。上場会社にとって現在の大きな関心事は、4月1日以降開始する事業年度から適用される金融商品取引法に基づく「財務報告に係る内部統制」への対応である。ここで養成されている内部統制の有効性の証明は、過去の事実を証明する従来の財務諸表監査とは異なり、未来を保証することを意味している。この未来を保証するための書類として、3点セットと称されている業務記述書、業務フロートチャート、リスク・コントロール・マチリックスといった膨大な書類が多数の従業員の参加により多額の経費をかけて作成され、積みあがっている。このような状態は法律が意図するところではあるまい。しかし、現場ではコンサルタントや監査法人の指導によりすべての業務は書面化されなければならならないとされ、暗黙知や潜在的知識の入り込む余地は閉ざされてた。過去と現在の枠組みを完全なものにすることにより未来を保証することを目的として積み上げられた書類では、小さな不具合や不適切な処理の発生は防止できても、大きな不祥事の発生を防止することにはつながらない。重要なのはコンプライアンスやリスク管理、さらには企業の社会的責任や企業倫理*1についての経営者の意識である。財務諸表自体が適正ならば、たとえ経営者が自ら内部統制に「重要な欠陥」があると認めても、また内部統制監査でその存在を指摘されても、欠陥の改善とその有効性を評価する一連の流れを計画的にかつ継続的に実行すれば、法の要請は満たされる。経営者の意識向上と内部統制の欠陥改善のための努力の継続こそが未来を保証する。
'08.2.19.朝日新聞
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