散歩道<2250>
経済気象台(293)・デュアル・ユーシッジ政策
20年ほど前、ペンタゴン(米国防総省)に呼ばれたことがある。主要な議論が終わり、雑談に入った時、私は何気なく「あなた方にとって今、最大のテーマは何ですか」と聞いた。打てば響くように返ってきたのは「国防総省の予算を減らすことだ」という言葉だった。これには質問した私の方が驚いた。属する組織の予算を減らすことを目標にするなどということは、日本ではあり得ないことだからだ。もし、そんなことを霞ヶ関の省内で言い出そうものなら、組織からつまみ出されることは間違いない。もちろん、彼らはただ単純に減らすと言っているのではない。戦力は維持しつつ、国防費を削減しようというのである。その政策を彼らは「Dual
Usage(デュアル・ユーシッジ)政策」と呼んでいた。意訳すれば「二重に用途を考える政策」とでも言おうか。その意味するところはこうだ。当時、国防総省で調達する品々は1本のネジまで特注であった。したがって、時としてネジ1本が100jすることすらあったという。しかし、ネジはネジである。世界中で高品質なものが作られており、「特注品」と性能は変わらない。何も100j払わなくても、1jで十分に良い物が市場から調達できるのだ。ネジは一つの例だ。汎用品で素晴らしいものは、どんどん採用していく。これが「デュアル・ユーシッジ」である。このことで約10%の費用削減が可能だ、ということであった。現在、日本では防衛省が問題となっている。費用を商社に丸投げするのではなく、あらゆるシステムについてデュアル・ユーシッジ政策をとったらどうだろう。こうして防衛省が開かれていけば、国民もまた、自らが国防に関心を持ち、政策に参画していくきっかけになるに違いない。
'08.2.16.朝日新聞