散歩道<2249>
経済気象台(292)・道路教
「仕組み」の経済学ー10
「真に必要な道路はつくる」とか、「必要でない道路はつくらない」といった言説はまるで「道路教」の信仰告白であり、合理的な政策判断を拒むものといえる。マックス・ウエーバーは「魔術からの世界の解放」という合理化が中世から近代に導いたといっているが、我が国では、政・官・業が三位一体となって、天の声を聞くために、中世の「魔術の園」に時計を戻そうとしている。ちょうど雪山の頂上から転がり落ちた小石が急斜面の積雪を結集して、麓の(ふおと)村落を崩壊させるように、田中角栄が半世紀も前に始めた道路建設のための特別目的税が、利権を求める政官業を寄せ集め、共同体の崩壊、地方の荒廃、格差の拡大、果てはこの国の衰亡を招いた。この雪崩れの慣性の強さは、30年以上に及ぶガソリンの暫定税率を更に延長しようという大合唱にも表れている。地方の首長のほとんどが継続を求めていることでも、利権の根深さに驚かされる。暫定税率廃止は環境に悪いなどとは、京都議定書以来意味ある環境対策を行ってこなかった政府には言ってほしくないものである。語るべき国家観もなく、没落に向かう国で?、10年先の道路建設の原資を確保しようと奔走する政治の劣化には嘆かわしいものがある。恒久と銘打った減税処置は瞬く間に廃止され、暫定率が30年以上も継続するのは、いったん確保した税源は決して手放さないという強固な意志の表れである。経済成長に必要な合理的意思決定ではなく、談合や指名入札といった高コストで無駄な公共投資をくり返す結果、税率アップで財源不足を補い続けるが、民力を衰退させる一方で競争を排除する非効率な経済部門を拡大させてきた。このような「花見酒経済」が持続不可能なことは自明であり、政治が動かなければ、国民が行動するしかない。
'08.2.15.朝日新聞
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備考:私はこの意見には?です。