散歩道<2245>

                             経済気象台(288)・リスク管理は有効か

 クレジット・バブル崩壊から5ヶ月が経過した。この種の問題が発生すると、必ず情報開示やリスク管理の重要性が強調されるが、それらの対応よろしきを得ればバブルは防げるのだろうか。証券化商品に限った話ではないが、適切な情報開示は不可欠である。しかし、今回の場合、そもそも証券化商品に関する詳細な情報が不足していたことが問題の根本的な原因であったのだろうか。過去何年もの間、信用スプレットは極端に薄くなっており、ポラティリティーも歴史的な低水準だった。金利も経済成長率をかなり下回っていた。これらはいずれもプロの投資家にとっては周知の事実であった。海外主要国の中央銀行も、居心地の悪い金融市場の状況に対し一定の警告を発していた。不足していたのは情報ではなかった。実際、民間金融機関の中にも、抱えているリスクが過大と判断し自らのポジションを手じまった先もあった。ただ、競争圧力が強い中で、多くの先が目先の利益を放棄してまでそうしたポジションの手じまいに踏み切るとは考えにくい。いつも生まれるのは「今回は違う」という市場の現状を正当化するロジックである。仮に手じまう先があるとすれば、そうすることに十分なインセンティブを感じる場合、すなわち、バブル崩壊後の金融資産価格の下落が非常に大きい場合である。現実には、バブルが崩壊すると、当局は金融緩和や財政刺激によって金融資産価格の下落を何とか抑えようとするので、そうしたインセンティブも生まれにくい。個々の経済主体がリスク管理に「努めることは重要であるが、それによってバブルの発生というマクロの問題も解決できると考えるのはナイーブである。残念ながら、我々はバブルの発生防止についても崩壊後の対処についても意味のある答えをまだ見いだしていないことから議論をスタートする必要がある。

'08.1.24.朝日新聞