散歩道<2212>

                             経済気象台(281)・非情と強欲
                         
 「仕組み」の経済学ー9
 この国の行政機構は、戦後60年をかけて巧妙極まりない酷薄な仕組みを作り上げてきた。この結果、経済活力は失われ、社会は疲弊している。その仕組みの主なものは、1、下克上 国民は政治家を代理人
(エージェント)とし、政治家は官僚を代理人として、行政を委ねる。代理人が依頼人を裏切る例は古今に満ち溢れている。2、傀儡(かいらい)大臣 組織力を誇る官僚に対し、政治家は落選の恐怖におびえる個人事業主に過ぎない。多くが大臣を目指し、運よくなれば官僚の傀儡と化して利権追求を図る。3、インセンティブ 人はアメとムチで動くが、憲法定める納税義務によって、行政は自動的にアメを得る。一方、虚構の無謬性(むびゅう)性神話で投入へのムチは失われている。4、利益相反 行政の多くが業界規制と業界育成という利益相反的機能を有する。官僚はこれを巧みに使い分け、業界との癒着と利権拡大を図ってきた。 5、局所最適 自己肥大化という組織の目的が共通なため、誰も全体最適を目指さず、省益・局益の最大化を目的とし、ムダと非効率が蔓延(まんえん)する。6、年功型終身雇用 行政機構では、年功型終身雇用の維持が目的化し、独法など様々な官製法人を乱造し、業界への天下りもやまず、国民経済の効率性を阻害する。7、ガバナンス この国の行政機構には、会計検査院といった機能不全の監視機能しかなく、組織の暴走を防ぐ仕組みとしてのガバナンスは無力に等しい。8、非情と強欲  組織とは目的合理的なため、非常なものであるが、この国の行政機構の目的が官僚の互助繁栄と化しているため、自らに強欲、民に酷薄なものとなっている。冷酷な行政機構の桎梏(しつこく)から国民を救済する政治家が登場すれば、救国の英雄となる。


'08.1.29.朝日新聞

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