散歩道<2204>
経済気象台(273)・アジア製造拠点の意味
豊富低廉な労働力の魅力から、日本を含めた世界からの投資を引き付けてきたアジアの国々で人件費が急激に上昇し、「安価な労働力の宝庫」というイメージが崩れつつある。特に賃金の上昇が著しい中国では、広東省の広州市などで直近の1年間、最低賃金が50%以上上昇した。タイ、フイリッピン、インドネシア、今年1月、最低賃金が6〜20%引き上げられた。これらの諸国に比べまだ比較的低賃金にあるベトナムでも2月、7年ぶりに最低賃金が引き上げられた。引き上げ幅は40%超と非常に大きなものだった。JETROが今年初め、アセアン地域に進出している日系企業を対象に行った調査では、約65%の企業が創業上の問題として「賃金の上昇」を挙げている。なかでも問題なのは人材の不足である。特にマネージヤーや技術者などの不足感がつよく、引き抜き合戦が人件費の上昇をに拍車をかけている。1990年代の円高時代の進出は、安価な労働力を利用し、欧米に輸出する「基地」としての位置ずけだった。それが今、人件費上昇の中で、日本企業はアジアの製造拠点の見直しを迫られている。発想を転換すれば、賃金の上昇はマイナスばかりではない。働く人々の購買力が高まることであり、市場に製造拠点が立地するというプラス面も見逃せない。インドや中国を合わせてアジアは世界人口の半分を占める。欧州連合(EU)や北米自由貿易協定(NAFTA)をしのぐ東アジア経済圏構想も取りざたされる。もはやアジアは単なる「工場」ではない。誰のために何を生産するのか・・・。環境の変化に合わせ、進出企業も変わっていかなくてはならない。アジアとのき共存共栄なくして日本が生き残れない以上、足元の人件費上昇を嘆くばかりでは始まらない。
'06.10.21.朝日新聞
備考:<999>〜<1002>講演会「この国の行く方を探る」の中で山崎正和氏は、製造拠点をインドやインドシナ、タイから中国に集中するのは問題があると指摘をされていた。
2008年2月22日
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