散歩道<2203>
経済気象台(272)・駅の改良と商店街
私鉄やJRの駅とその周辺の模様替えが盛んである。片側にしか改札口がなかったのを、線路の上をデッキでむすんんで「駅の反対側」をなくしたり、あるいはエスカレーターやエレベーター、トイレが新設されたりしている。特にお年寄りや障害を持った人にとって、とてもよいことだ。しかしすこし気になるのは、駅の改良工事と合わせて、新築になった駅ビルに、商業施設が店開きすることである。スーパーマーケットや書店といった鉄道会社の子会社をはじめとして、レストラン、居酒屋、美容室、場合によっては、歯科や眼科といった医療機関まで登場することによって、そこにちょっとした「まち」が出現する。鉄道会社は民間企業だから不法行為ではない限りどんなビジネスをしようと自由だ、という考え方も成り立つだろうが、さてどんなものだろう。最高の立地条件ともいえる「駅中の商業施設」は、消費者には便利かも知れないが、駅前を中心とした既存の「まち」のお店への打撃はけっこう大きい。商店街のがんばりも期待したいが、競争条件が同一とはいえない。交通機関はすぐれて公共性を有する。地域社会の生活にとって「駅の改良」は望ましい。それゆえ国と地方(市など)は「都市再生交通拠点整備事業」などによる莫大な補助金を支出している。もちろん鉄道の側は、店舗とする駅ビルそのものは自前だと主張するだろう。しかし現実問題として改良工事は一体的に行われ、公金(補助金)の投下は「鉄道会社の私有部分」にも及んでいよう。「公金の流用」とはいわないが、「得」をしていることに間違いはあるまい。鉄道という「公共性」を経営資源として各種のビジネスに乗り出すのは「公」による「民業」の圧迫となるのではなかろうか。地域社会というステークホルダーへの配慮にもっとバランス感覚があってもよい。
'06.10.14.朝日新聞
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