散歩道<2201>
経済気象台(270)・人事・組織・戦略
6月は株主総会の季節であり、今年も新たに社長が誕生している。社長というポストは特に大企業であれば、巨大な権力を持ち、何でもできると思いがちだが、実際にはあまり多くない。この事実を取り違えて失敗する社長も多い。また、不況下で苦難にあえいでいる時の方が、危機感をバネに社内のべクトルをあわせやすいもので、社長の裁量度は高い。好況時の方が社長の自由度は低いのである。内部昇格が殆どのわが国企業では、セールスの神様とか根回しの達人、管理の生き字引といった一芸に秀でた人材が登用されることが多いが、一旦社長になればそのような特殊技能も後任に引き渡さざるを得ない。その結果、社長ができることは「人事・組織・経営戦略」といった全社的な事項に限定され、実際これらに熱中する社長も多い。ところが、中核の人材についてはしがらみも多く、会長が握って離さない場合が多い。組織についても業績のいい部門に手を入れることは難しく、せいぜい不振部門に手を入れるぐらいであるが、それも人事のしがらみを考慮すると躊躇(ちゅうちょ)される。結局、経営戦略が社長専管事項ということになるが、好調時には判断が甘くなり、これがつまずきの石となって、将来に禍根を残すことが多い。社長の仕事とは、企業目的である持続的成長を実現する基盤を作り上げ、強化することだ。これを促す最善の方法は継続的な問題提起である。つまり社長にはすぐれた問題発見能力が必要なのである。会社に潜む問題を発見することで、時代にあわなくなったこれまでの仕組みを見直し、変革を促すことが可能になる。なお、問題解決は社長自ら乗り出すのではなく、有能な部下に任せるべきである。失敗すれば立場を危うくするし、部下も育たない。加えて、そんな時間もないはずである。
'06.6.28.朝日新聞
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