散歩道<2166>

                              異見新言・ITと匠の技(2)                      (1)(3)続く
                               連携させて継承・向上を          

世代の差 越える
 私の研究室で勧めている実践例を二つ紹介したい。一つ目は、トマト栽培である。大学のある神奈川県をはじめ新潟県、滋賀県の農家と連携して栽培の研究を進めている。国内の農業が厳しいことはよく指摘されており、実際に国内の大多数を占める小規模農家は、収益性の低さに苦しんでいる。しかし、少数ではあるが、熟練生産者が栽培するノウハウを駆使することで高収益となっている小規模農家が存在するのも事実だ。我々は、このような熟練生産者の方々と連携し、「高収益に必要な栽培ノウハウの継承・伝搬」と「栽培ノウハウの更なる向上」の二つの取り組みを、ITを活用して進めている。各農地には複数のセンサーを設置し、熟練生産者が行った指導が、どのような環境条件の際になされ、どのような結果を環境やトマトに及ぼしたのかを常に計測している。計測データは、インターネット経由で大学内に集積され、IT分野の最新の研究成果を活用した解析により、他地域でのトマト栽培ノウハウとして蓄積される。この蓄積データーは、インターネット経由で配信され、各地の農業生産技術向上に資することが着たいされる。これが一つ目の取り組みである。熟練生産者には、自身の取り組に関する比較分析結果と、システムに蓄積された複数の栽培ノウハウが、常に自身の取り組みを客観的に捕らえる資料として提供される。これらの資料を検討することで、熟練生産者は、自身の栽培ノウハウの更なる高度化や高収益化が見込まれる。これが二つ目の取り組みである。もう一つの実践例は、国内製造業分野に関するものだ。基幹産業として日本経済の発展を支えてきた製造業分野は、前述したアジア諸国の技術向上と、熟練技術者の高年齢化により、今後の先行きが厳しい状況を示している。詳細について述べるスペースはないが、基本的な方向性はトマト栽培と同様だ。熟練技術者が持つ様々なノウハウの「継承」と「向上」を、ITを用いて実現するというものである。すでに国内各地の中小製造業と連携し、具体的な取り組みを進めている。

'08.1.朝日新聞・慶応大学環境情報学部専任講師・神成淳司氏

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