散歩道<2162>

                         けいざいノート・論争はめぐる(3)                (1)〜(4)
                   
苦い先送り、10年前にも  痛み避けず課題直視を
          

 また、景気回復が5年以上も続いているのに、経済に力強さがない主因は、賃金が上昇しないことだ。労使の力関係にも明らかに問題がある。こうした問題を解決するには、解雇や昇進の条件などの待遇を正社員と非正社員で平等化し、一方、使用者側にもより厳しい責任を負わせる、というような労働市場改革が必要だ。労働市場の改革は、格差を是正し、しかも、労働の効率化によって経済全体の生産性を上げるので、経済成長も高めるはずだ。成長にも格差是正にも有効なテーマーが、なぜ政策論その主要論点にならないのか。答えは、10年前に不良債権問題がテーマとして取り上げられなかった事情と同じだ。詰まり、多くの既得権者が存在し、彼等に具体的な「痛み」を与える改革だからだ。10年前に不良債権で銀行や借り手企業が苦しんだ時、不良債権処理を進めれば、銀行や企業の倒産が続出し、経営者や従業員に大きな痛みが及ぶと恐れられた。むしろ、不良債権の処理を先送りにし、公共事業などで時間を稼ぐのが最良と思われた。そうすれば、最終的には、財政負担が国民全体に広く薄く行き渡るが、倒産等のいたみを感じる人は少なくてすむ、と考えられたわけだ。

'0712.22.朝日新聞・経済産業研究所上席研究員・小林 慶一郎氏

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