散歩道<2157>

                           夕陽妄語・二〇〇七年回顧(2)                 (1)〜(3)

 ○ ○ そもそも2007年に日本の近隣外交は、どういう具体的な成果を得たか。日本側の福田内閣と中国側指導部との双方の努力が経済を軸として友好関係を一度修復した。その点を除けば中国との「経済政冷」は続いていた。韓国とは通商とある程度の文化交流、北朝鮮とは国交ナシ。ロシアとは平和条約なく、北方四島問題は微動だにせず。わずかに頼るのは米国のみだが、米国は日本に日中関係の修復を求め、2006年中間選挙で議席の多数を占めるにいたった民主党系論客の中には、日本の右傾をとがめる声さえも現れた。総じてこのような状況をみれば、これは明らかに東北アジアにおける日本の外交的孤立である。六者の日本を除く五者相互の関係が、その間停滞していたわけではない。例えば1年前の12月に、誰がニューヨーク・フイルハーモニックの北朝鮮訪問を空想することなどできただろうか。今年末の米・北朝鮮関係はそこまできたのだ。来年2月の管弦楽団の北朝鮮訪問はすでに今月公式発表されている。
 ○ ○ 東北アジアの非核化は、六カ国だけの問題ではない。もし成功すればNPT
(核不拡散条約)を活性化し、さらに核兵器全廃へ向かう運動を鼓舞するだろう。もし失敗すれば、NPTはいよいよ死文化するに違いない。そこで原子炉とミサイルの技術を持ち、多量のプルトニュームを蓄える国がいつまで「非核三原則」を守り通すだろうか。冷戦の時代に核兵器競争は始まり、同時に核軍縮交渉とNPTも始まった。しかしこの体系に欠陥のあることは、現に核武装の国が増加し、兵器が技術的に進歩していることから、明らかである。欠陥は簡単明瞭で、要するに不平等ということである。不平等は、核弾頭の数のみに限っても、核武装国と非核武装国との間にあるばかりではなく、国連安保理事会の常任理事国の間にある。これほど極端な国際的不平等が長い期間にわたって維持されていることは期待できない。現にインドとパキスタンは、最近それぞれのミサイル兵器の実験をした。又北朝鮮は、核兵器保有を広告したことがあり、米国はイラク、イラン、シリアの核兵器による脅威について語った。
 

'07.12.19.朝日新聞・評論家・加藤周一氏

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