散歩道<2135>
                            
                            世相(48)・言葉・年寄りの冷や水

生理と心理のズレ
 年配の方なら、一つ二つは身に覚えのあるはず。まだ若いつもりでいたのに、徹夜で疲れでガックリきたり、孫娘をつれてゲレンデンに出てみたものの、たちまち足の骨を折ったり。そのたびに、やっぱり年だなあ・・・と、苦笑しながら、生理的年齢の限界を噛みしめた事があるはずです。《老人に似合わない元気のよいしわざをひやっかしたり、失敗を警告することば。『故事ことわざ事典』から)・・・・》
 それにしても、人間というのは、どうしてこう、いつまでも自分は若いと思いたがるのでしょう。フランスの劇作家アルマン・サラクルーの芝居「アベコベ人生」は、そんなおかしさを逆説的に描いています。老人がこの世に突然現れて、段々若返り、赤ん坊になり、やがて母親の胎内にかえっていく。もし神が存在するなら、若い人が年をとり、美貌を失うなどという非常な仕打ちなどされまいに・・・・という願望を込めた喜劇と言っていいでしょう。肉体の年齢は、確実に一日一日死へ向かって近ずいている。しかし意識の上では、きのうの1日ときょうの1日は連続していてその間に何の変化も起こっていないという矛盾。作家のなだいなだ氏
*1は、二十代で六十代をみるときと、六十代で二十代をみるときでは、同じ四十年の年齢の見方が全く違うのだといいます。年寄りは、二十歳のころの自分を双眼鏡で近ずけてみるが、若ものは双眼鏡をアベコベにして、遠くの方に老人をみる。若い時に想像していた親の年齢に、自分が達した時、はじめて、ああこれがあの年齢だったのかと知ってガク然とするのです。生理的年齢と心理的年齢のこのギャップ・・・。これこそ、冷や水の原因なのでしょう。ことわざ医学事典


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