散歩道<2132>

                           世相(45)・三っ子の魂性格形成の論議

 性格形成の論議・1966年ハワイで開かれた、心理学の国際会議で、人間の性格が何歳ごろ形づくられるかの問題をめぐり、米ソのグループとヨーロッパの諸国の間ので、会期中意見の対立が続いた。「持って生まれた性格は、変えようがない」とするヨーロッパ・グループに対して、米ソ連合運は「環境と教育次第」と、平行線のまま、結論なしで会を閉じた。性格形成についての論議は、人類文化とともに古い。中国で「山河改むるに易く、本性移し難し」とは、孔子以前から言われていたし、三千年前、周王朝八百年の基礎を築いた文王の人柄は、その母太任が胎教にはげんだたまもの、と信じられた。古代ギリシャでも同じことが言われた。性格を先天的ときめつける説は、メンデル遺伝説と結びついて、いまでもヨーロッパに深く根ざしている。
 ところが、環境が人を支配するという基本理念をかかげるソ連では、性格もまた、後天的なものと考える。教育の力で人間改造をはかろうとするアメリカも同じ。それらのよりどころが、遺伝の突然変異の現象だ。例えば、大腸菌はもともとストレプトマイシンに弱いが、1千万に一つの割で、ストマイ耐性菌がヒョッコリ出現する。そこではじめから弱いストマイのなかで繁殖させたところ、ほとんどが耐性菌になった。これが突然変異で、スターリン時代のソ連では、環境を変えれば突然変異が無限に出来るという理論がまことしやかに信じられたこともあった。無限というのもオーバーだが、最近では突然変異が起きるのは、遺伝子の一部に、遺伝情報の流れを調節する調節遺伝子と呼ばれる1群があって、この働きが、環境によって変わるためらしいことがわかってきている。
'70出版・ことわざ医学事典