散歩道<2099>
経済気象台(255)・低インフレのからくり
原油高の上昇が続き、1バレル=100jという、少し前までは[ありえない」と考えられていた水準を超えたようだ。しかし少なくとも日本では、インフレを懸念する声は聞かれない。実際、生鮮食料品を除く消費者物価上昇率は、今年2月以降前年比マイナスが続いている。かといって、原油高の影響がどこかに消えてなくなったわけではない。原油輸入金額は、98年度の2.6兆円から06年度の11.4兆円と4倍以上に増加しており、、日本全体としてそれだけの所得減が生じていることは事実だ。問題はそれが、誰にどのような形で分担されているかということであろう。大雑把な言い方だが、第1次石油ショック時は原油高→値上げ→賃上げ→値上げというプロセスを経てインフレ率が急上昇し、最終的には消費者が原油高を負担した。第2次石油ショック時は収益悪化・賃上げ抑制という形で、企業と家計が所得減を分け合った。今回はどうか。企業は、原燃料価格の転嫁ができないといいつつ、高収益を上げてきた。それは、合理化努力もあろうが、労働者の賃金を抑制して原油高の影響を吸収してきたからで、労働分配率は低下した。企業の中でも、中小企業は大企業と異なり、原燃料高の一方で製品価格が下落している。つまり原油高の負担は、労働者の賃金削減と中小企業の収益悪化によって吸収され、それゆえインフレ率がたかまっていないということになる。それは今後も続くのか。当面はそうだろうが、2〜3年後は状況が変わっているかもしれない。少子高齢化で労働力が不足すれば、賃金には上昇圧力がかかる。中小企業の淘汰が(とうた)すすめば、製品価格は下げとまる。グロバリゼーションによるデフレ圧力の震源地だった中国でも賃金が上昇しインフレ率も高まっている。だとすれば、今度は日本の物価が上昇する番だ。
'07.11.14.朝日新聞
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<195>1、公共工事(提案)・2、地震に耐える住宅輸出(提案)、<214>住宅価値向上が景気刺激、
備考:散歩道<2086>経済気象台(244)からサブライムローン問題を、継続的に取り上げています。