散歩道<2098>
経済気象台(254)・「仕組み」の経済学ー6
ドラッガーの遺産
組織には目的があり、それを実現する多面のプロセスが必要である。破綻組織というべき社会保険庁についてこれを見てみると、徴収した保険料を、受給資格を得た人々に支払いを行うという目的のために、@徴収A運用B支払い、という3段階のプロセスを有する。この組織は、@徴収面では(イ)徴収記録の不備(ロ)徴収時の横領(ハ)徴収率の偽装、A運用面では(イ)グリーンピアなどへの流用(ロ)職員の娯楽・供応への使い込みや特殊法人への巨額融資による天下り工作、B支払い面では(イ)「申請主義を」を盾にした怠慢(ロ)失われた年金記録といわれるような支払い体制の欠陥、等々の問題が指摘されている。組織にはこのようなライン・プロセスに加え、人事、労務、経理、財務、総務、管財、ITシステムといった様々なサポート機能がある。これらもITシステムで明らかになったように、専門家を育てず、外部に丸投げする結果、巨額の浪費を行ってきた。人事・労務でも三層構造といわれる「カースト制度」を助長してきた。亡きピータ・ドラッガーの貢献の一つは「経営」という営為は企業の特有なものではなく、どのような組織にも必要と指摘したことにある。この組織でも本来最も重要な機能は「経営」であるが、平均在任期間1年程度の長官に経営の意図があったとは考えられない。また疑似官僚組織である損保から民間出身の長官を登用したことからも、政府や厚労省に元々経営などさせる気がなかったことがわかる。「大山鳴動して、ネズミ1匹」も出せなかった検証委報告でガス抜きし、器の議論で目くらましを測ろうとしているが、どのような器を作っても「経営」という魂を欠けば、官僚とそれにタカル政治家、業者に再び取り込まれる。
'07.11.10.朝日新聞
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