散歩道<2095>

                          経済気象台(251)・「仕組み」の経済学ー5

 今年のノーベル経済学賞は米国のメカニズム・デザナー3人に贈られる。メカニズム・デザイン理論は受賞は一人が90歳という年齢からも推測できるように、体制間競争の時代の資源の効率配分の理論であったが、やがてゲーム理論や情報の非対称性理論と結合し、市場の失敗を回避する仕組づくりの理論として発展した。この理論の実務への応用として喧伝(けんでん)されるのは、英国政府が2000年に3Gライセンスを入札方式で売却し、220億ポンド(約5兆円)という巨額のタナボタ収入を取得した通信会社はその後膨大な債務負担に悩まされ、大幅な収益悪化と大量リストラを強いられたため、結局税金の先食いに過ぎなかったと言う結果になった。この理論は実践面の成功例も少なく、正統派経済学と同様に数学的精緻化に向かっているようにも見られる。市場メカニズムが機能しない状況下で、政策や制度設計での是正を目指す仕組み作りの理論であるが、わが国を見ても明らかなごとく市場の失敗よりも政府の失敗例が満ち溢れ、しかも失敗の教訓が生かされていない。最近のタブロイド判的な話題だけでも、官製談合を主導したり、頻繁に業者接待を受けたりする高級官僚や、情報隠匿・廃棄、裏金つくりに励む中堅・下級官僚等々。百害にあふれた官僚機構が、なぜ失敗を重ねるのかかの分析が実務的に有意義である。メカニズム・デザイン理論の1つに情報の非対称性理論を援用したウソの回避するインセンティブの仕組み作りがあるが、虚偽と韜晦(とうかい)にあふれたこの国の官僚組織にはその適用が待たれる事例にこと欠かない。これらを追求していけば、いずれブラック=ショールズのオプション理論のように実用に耐える理論となるだろう。

'07.10.26,朝日新聞

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