散歩道<2088>
経済気象台(246)・一時の凪(なぎ)
経済が落ち着いている、最近の経済指標は、概して良好だし、企業の景況観も少なくとも大企業では底堅かった。エコノミストも政府も日銀も日本の景気はこのままさらに続いていくと考えている。しかしそれは時化(しけ)が来る前の一時的な凪(なぎ)に過ぎない可能性がある。実際我々を取り巻く強大な風雨は幾重にも及んでいる。第一・・・信用収縮。資産価格下落などに伴う金融機関の損失が拡大しつつあり、英国では預金取り付けもおきた。市場における銀行の資金調達コストはなお高く、それらが銀行の貸し出し余力をそぎ、企業や家計の金融コストを高めている。第二・・・景気減速。信用市場の混乱が景気に悪影響を及ぼし始めている。米国では、住宅モーゲージの新規貸し出しが滞り、住宅市場の悪化を増幅している。欧州でも、信用不安の高まりが景気回復の足かせになるとの懸念が強まりつつある。第三・・・ドル安。ドル安は、当面の米国景気にとってプラスだが、欧州諸国ではドル安不満が募っている。ドル安の持続が、世界のドル離れを一斉に引き起こすことになれば、世界経済・金融市場の混乱は避けられない。第四・・・インフレ。原油価格が市場最高値をつけるとともに、新興国で生産コストが上昇し、これまで物価安定をもたらしてきた環境は変化している。また、金融不安沈静化のための利下げが、先進国のインフレ圧力を強める懸念もある。第五・・・政策対応の混迷。以上のような複雑な状況下で、どのような政策が適切なのか、誰も分かっていない。実際、利下げをしても信用不安は解消していないし、インフレ圧力が残る下では、金融緩和にも限界がある。利上げは、ドル安を加速させるかもしれないし、財政政策の効果にも疑問が残る。だとすると、今は、楽観論よりも慎重論に立って、対応を考えるべきと思う。
'07.10.13.朝日新聞