散歩道<2046>

                            異見新語・若さ・地方と政治(3)                  (1)〜(3)続く
                            現実感取り込む努力もて      

 定型化した語り
 進行中の自民党総裁選で気になることがある。
 一つは「若さ」に代わって経験豊富な「老練さ」が評価されているように見えるが、これは看板を取り換えただけではないか、ということだ。「キヤラ立ち」の競い合いだけが前面に出て、実は対立や新鮮味のない主張ばかりで自民党の変わらなさが際立つ。
 「地方」の語られ方も気になる。候補者2人の論戦では、地方全般の惨状を訴えつつも、北海道の旭山動物園のような一部の取り組みがとりあげられ称揚されるという、定型化されたものにとどまっている。「地方」は総理総裁になるための手段ではない。
 政治とは、利益の集約である。後に切り捨てることになろうとも、まずは集約されるべき多様な声に耳を傾けなければならない。近年の日本の政治は、リアルな「地方」をどれだけ取り込んできただろうか。その回路の多くを失い、社会の諸領域にセンサー機能が行き届いていないのではないだろうか。
 地域性にこだわることで人びとの現実に触れようとしている文学に比べ、政治の側こそがそのための脈絡づくりへの真摯
(しんし)さを欠いていると言わざるをえない。

'07.9.22.朝日新聞・西南学院准教授・田村 元彦氏