散歩道<2044>

                            異見新語・若さ・地方と政治(1)                  (1)〜(3)続く
                            現実感取り込む努力もて      

 若さを売りに国政のトップへと上りつめた安倍晋三首相が突如、辞任表明した。彼の評価には「強さ」と「脆さ」(もろさ)、「きまじめさ」と「甘さ」といった振れ幅がつきまとってきたが、それは、まさに「若さ」のためである。
 「若さ」とは本来、そうした二面性をはらむものだ。だからこそ時に持ち上げられ、時に見くびられる。かっての期待が瞬時に失望に転じたのは、いわば必然だった。
バイトという旗 
 近年、早々と仕事をやめてしまう若者が話題になっている。3年でやめる。いや1年もいる、と。大学を出て就職した彼らは、社会で何に直面したのだろうか。
 学生の保護者からこんな嘆きを聞かされたことがある。
 「子供がアルバイトばかりしている。問題だと思うが、なぜ問題なのか、その理由をうまく説明できない」
 「バイトをして社会経験を積んでいる」というのは、親にとっても子供にとっても、「錦の御旗」だ。親はこれ以外の、社会の多様なあり方を子供に伝える労を省くことができる。学生は大手をふって、金を稼ぎ、同質的・限定的な人間関係に閉じこもることができる。そうして親も子も思考停止し、「共犯関係」めいた黙約を結んでいるのだ。
 もちろん、バイト体験全般を否定するつもりはない。問題はそこに没入したり、バイト先での挫折体験に強くとらわれたりする若者が少なからず存在することだ。
 

'07.9.22.朝日新聞・西南学院准教授・田村 元彦氏