散歩道<2038>
経済気象台(241)・人件費抑制に限界
米国の低所得者向け住宅ローンの問題をきっかけに、世界の金融市場に目詰まりが生じてしまった。このままお金が滞ってしまうと、経済そのものが機能マヒをおこすリスクが高まった。そうした中で、日本だけが利上げをするわけにいかない。これから米国が金融緩和を進めていく間は日銀としても様子を見ざるを得ないだろう。金融市場の機能回復を優先するためにしばらく利上げができないのならば、その間、景気が強かったり、インフレ圧力が高まったりすることは、日銀にとってありがたくない。しかし、こういう時に限って不都合な指標が出る。夏場の生産好調と人件費の下げ止まり機運だ。前者は輸出の回復や在庫調整の一巡もあり、予測指数から見ると、7〜9月に前期比4%程度の大幅増が見込まれている。後者は労働需給逼迫(ひっぱく)の中で、大企業の労働分配率にも下げ止まり感が出てきたことだ。既に国内企業物価は上昇傾向にあるが、その中で消費者物価上昇率が小幅マイナスとなっていたのは、大企業で人件費を抑えてきたことによる面が大きい。それもパートや派遣社員など、非正規雇用へのシフトによるコスト削減が効いている。実際、大企業の労働分配率低下と非正規雇用比率の上昇とが軌を一にしている。すでに3人に1人が非正規雇用になっている。ところが、この4〜6月には非正規雇用の比率が頭打ちの形となり、これと呼応するように大企業の労働分配率が下げ止まった。低賃金労働力へのシフトが一巡してしまうと、労働需給の逼迫が賃金上昇、価格引き上げにつながりやすくなる。すでに失業率が3.6%まで低下し、企業の人手不足感は近年になく高まっている。ここからの労働需給逼迫は、これまでと違い、賃金、物価の上昇に跳ね返りやすい。当面利上げが難しいだけに、日銀にとっては、なんとも間の悪い話だ。
'07.9.7.朝日新聞