散歩道<2037>

                            経済気象台(240)・悲劇の債権国

 日本は世界最大の債権国である。海外で保有する資産から、海外から受け入れている負債を相殺した差額が世界一の国ということだ。最大の「債権国」の座は、第一次世界大戦を境に英国から米国へ移り、1980年代後半に米国から日本へと移行した。日本が債権大国となってもはや20年が経過したことになる。「債権国」は豊かな生活を享受し、その上で海外に対して貴重な資金を配分するという、世界経済の方向を決める重要な役割りを担う。債権国だった時代は、英国はポンドを、米国はドルを世界中で国内と同じように使うことができた。ところが日本は債権国であるメリットを享受できずにいる。輸出して受け取ったドルを、豊かな生活をすることに生かしきっていない。ドルを円に交換すると、円が切りあがる。それを恐れてドルのまま米国で運用している。一方、米国には日本に払ったはずのお金が戻ってくる。その結果、貴重なお金どころか過剰流動性を発生させている。赤字で、本来お金が不自由なはずの米国は、あり余るお金を住宅ローンとして借りて、空前の住宅ブームを演出し、豊かな生活を享受してきた。それでもお金が余り、日本の株式や不動産を購入する目的で資本輸出までしている。日本の株式市場や米国で不動産市場において、日本の投資家は片隅に追いやられ、いまや米国をはじめとする外国人投資家の一挙手、一投足に注目が集まっている。今後は日本企業を買収する資金となって押し寄せてくる可能性すらある。これでは悲劇を通り越して、喜劇の債権国になってします。輸出で稼いだお金を自国通貨の円に交換し、国内で使うことだ。自ら求めないと、豊かな生活は送れない。額に汗して一生懸命稼いだお金を、他国に使われるだけである。

'07.10.3.朝日新聞